神楽は私たちの命ですよ。
「天保年間…。世に言う天保の大飢饉が忍び寄る時代に、井川村の大村家の人が、神官(しんかん)の免状を受け取りに上洛(じょうらく)(地方から京都に行くこと)しました。帰途、伊勢神宮に参拝したときに太太神楽(だいだいかぐら)を観て感銘を受け、この型をもとにできたのが、井川神楽とされています。」と語るのは、井川の神楽を今の世に受け継いでいる滝浪英希さん。ふだんは、南アルプスユネスコエコパーク井川自然の家でキャンプセンターに勤務しています。
井川の神楽は、古くから農閑期に於ける重要な娯楽でありました。江戸後期慶応の頃、大村家から今の滝浪家に引き継がれました。滝浪家の先祖が京都に出向き、神官の名状を受け、慶応、明治、大正、昭和期に盛んに行われ、今の形に伝承されたと伝わっています。
神楽は、古くから重要な庶民の娯楽であり、成願成就の真剣な祈願でもありました。神楽は、女竹から作る笛、古くから伝わる太鼓にあわせて4~5人の舞い手が、あでやかな衣装を着けて厳かに舞います。祝詞を唱えながらの神官しか舞えない「ひとり舞」も一見の価値が有ります。午後1時から深夜3時まで夜通し奉納され、地元の方や市街地等の遠方からの方など、多くの人で賑わいます。
「笛や太鼓にあでやかな衣装。井川の農閑期に行われる一大イベントですよ!子供の頃からこれが楽しみでね!前の晩には眠れなかったですよ!」と滝浪さんは目を輝かせて話していました。
紅葉真っ盛りの11月3日に行われる井川神社のお祭りが近づくと、滝浪さんの自宅などで10月中頃から連日連夜、神楽の練習をしています。
滝浪さんは、こう続けます。「今は、後継者不足が深刻ですね。しかも井川神社の神楽は、口伝(くでん)がモットーなのですよ。書いて残すわけにはいかないのです。笛や太鼓、舞の微妙なサジ加減やタイミングは、やはり「真似」でないと伝わりませんからね!街の方たちの参加?もちろん大歓迎ですよ!お金は出ませんが(笑)、おおいにお酒を振舞いますので、参加したい方は、ぜひ私宛にご連絡ください。」と満面の笑顔で語っていました。
現代は、デジタル媒体に記録を残すことが主流になっています。こんな時代に自分の代で伝統を終わらせることはできないと神楽の伝統を重んじ、口伝にこだわり手取り足取り次世代に伝統継承をしているのが滝浪さんです。
井川の神楽と地域の伝統を愛し次世代へ継承して行こうとする熱い思いに満ちた男の目をした滝浪さんでした。
現代では失われかけている人と人のふれ合いの中での伝統継承が、井川には今も残っています。
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