高山の冷涼な気候、強風や乾燥、岩場、崩壊地などの厳しい環境のなかでも、高山をすみかとする動植物は多数存在します。その中には、氷河期の頃に日本にやってきた動植物や、南アルプスが生息地の世界的な南限である希少な動植物も生息しています。大切に次代に引き継ぐべき地球の宝物です。
ニホンライチョウ(氷河期の遺存種)
本州中部の標高2,200m 以上の高山で一生を過ごす、生息環境が非常に限定された鳥で、生息地の世界的な南限は、南アルプスのイザルガ岳(静岡市)です。1980年代には、国内生息数は約3,000羽と推定されていましたが、2000年代には約2,000羽弱に減少したと言われています。国の絶滅危惧ⅠB 類(EN)に指定され、保護の取組が進められています。
“赤”は、オスの特徴です
ライチョウのオスは、目の上が赤く、繁殖の時期や興奮している時に赤い部分が大きくなります。
一年に3回、羽の色が変わります
ライチョウは、体の羽が、季節によって変わります。羽が抜けるたびに違う色の羽が伸び、体の色が変化していきます。体の色が変わることで、外敵から身を守るための保護色になると言われています。
ずんぐり丸い体
気温の低い高山域で体温低下を防ぐため、体積に対して表面積の少ない丸い体をしています。丸い体ですが、飛んで移動する事もあります。
爪まで毛に覆われています
足は、爪まで羽毛に覆われており、寒い冬を乗り切るための工夫の一つです。また、羽毛があることで雪の上を歩きやすくなります。
ライチョウは、南アルプスユネスコエコパークのロゴマークに採用されています! |
氷河期の遺存種
ライチョウや高山植物は北半球の寒い地域に広く分布していましたが、氷河期になると、日本は大陸の一部と陸続きになっていたため、北の方から日本へやってきました。
氷河期に日本へ渡ってきた動植物は、生きていくために寒い場所を求め、高い山の上へと生育・生息場所を移し、南アルプスの高山帯にたどり着きました。氷河期から南アルプスに生育・生息している動植物はとても貴重で、“氷河期の遺存種”と呼ばれています。(“生きた化石”とも呼ばれています)