南アルプス周辺の金山の歴史は、戦国時代まで遡ることができます。16世紀に今川氏によって井川湖の北東側に位置する笹山金山が開発されると、武田時代には日影沢金山とともに坑道が掘られ隠し金山とされました。金はプレートの沈み込みによって地下水が熱せられたときに溶け込んだ金属成分が沈殿して固まったものと考えらえています。金鉱脈の周囲では熱水が存在するため、金山跡をたどっていくと同じように温泉も分布していることがわかります。大井川の上流では、小河内川や笹山金山など、室町時代の頃から金の採掘が行われてきました。
採取には、藁を太目に荒く編んだ目に砂金を引っかけるネコザ、砂金を含んだ砂をすくいあげるカッサ、砂金を選別するユリボンなどを使います。小河内ではユリボンの他、種々の水替柄杓・曲桶が必要であったため曲物(ワッパ)作りが盛んになっていきました。この曲物の技術に江戸時代末期の漆塗りの技術が加わり「井川メンパ」が作られるようになりました。
●出典「南アルプス学・概論(改定版)2010年3月:静岡市」より