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井川地域の学習発表会

井川地域の学習発表会

 12月初旬、静岡市葵区井川にある井川生涯学習交流館で、井川小中学校学習発表会が開催された。学習発表会は、平成21年頃から開催されており、子ども達がそれぞれ研究テーマを決め、1年間の結果を親族や地域の方々に発表するイベントだ。今年発表する学生は、小学1年生から中学3年生(9年生)までの5名。今回は、9年生の海野要(うんのかなめ)さんが、6年生から9年生まで研究してきた「湧き水」について取材した。

おじいちゃんがきっかけで
井川の湧き水に興味を持つ

井川地域の学習発表会

海野さんが湧き水を研究するきっかけになったのは、おじいちゃんがお酒を飲む時に、井川の湧き水を使っていたこと。井川の本村から離れた場所にある、明神沢の湧き水をわざわざ汲んできて使っていたという。井川には、複数の場所に湧き水があるが、明神沢の水にこだわって使っていたことから、他の湧き水と何が違うのかに興味を持ったという。

 小学3年生から5年生までは地元の木でベンチを作ったり、井川の昔話等を研究テーマにしたりしていたが、6年生から9年生までは井川地域の湧き水に特化して研究を進めてきた。6年生の時は、地元井川の湧き水のおいしさと安全性を知ってもらうために、水質検査や飲み比べの研究を報告。7年生の時は、井川の湧き水の有用性を知ってもらうために、湧き水と水道水とでお米を炊いたり、豆腐を作ったりして比較・研究を報告した。8年生の時は、人々の生活と湧き水の関わりをテーマに、湧き水を使っている人達の思いをヒアリングして報告した。そして9年生の今年は、湧き水の良さを地域の方以外に知ってもらうことや、情報発信することの大切さを伝えるために、これまで研究してきた井川の湧き水マップ等を掲載したWEBサイトを作成し発表した。

多くの人に井川の湧き水を
知ってもらうために

井川地域の学習発表会
門間観音堂からほど近くの湧き水スポット

 湧き水の情報発信をするに当たり、井川で実際に情報発信をしている人達にアドバイスをもらった。誰に対して情報発信するのかターゲットを絞ること、相手を意識すること、いろんな視点から写真や動画を撮ることの重要性を学んだ。また、同じような目的を持った複数のサイトを比較・研究し、良いと思った点を自分のWEBサイトに活かしたり、伝えるための情報整理も行なったりした。初めて井川を訪れる人にも湧き水スポットが分かるように、目印となる場所から湧き水スポットへのルートを動画で撮影したり、タイムラプス動画も作成した。湧き水スポットを知ってもらうための工夫が取り入れられたサイトを作成するにあたり、地域の多くの方のアドバイスを貰ったことへの感謝の言葉もあった。

 WEBサイト上では、井川地域にある6箇所の湧き水スポットを紹介している。井川の本村、田代・小河内地域、それらの地域よりも更に大井川の上流地域、と広域にわたる。各スポットを訪れて撮影した写真や、各水源の水温や硬度、湧き水の使用例等も紹介しており、非常に分かりやすい情報発信だ。4年間かけた研究の集大成となったWebサイトは下記アドレスからアクセスできる。
https://pc-edu.info/ikawa/

井川地域の学習発表会
井川地域の学習発表会

 発表会が終わった後、本村地域の最寄りの湧き水スポットである「薬沢」に案内してもらった。茶畑の下から湧き出ていた。このような場所が井川地域には複数あり、この湧き水も南アルプスの自然の恵みの一つである。薬沢の他に本村地域には、門間観音堂の裏手にも湧き水スポットがある。今後、本村を訪れたら、海野さんのWebサイトを見ながら、湧き水巡りも楽しめそうだ。

地域の方々からのアドバイス

井川地域の学習発表会

 湧き水の発表をした海野さんの他に、地域のグルメマップを作成した9年生の松下さん、星座の研究をした8年生の佐野さん、鹿と人々の暮らしを研究した8年の森竹さん、各教科や、体験活動で身につけた力を生かし、スライドにまとめた1年の長島さんと5人の学生それぞれが1年間の研究結果を発表した。学生達が研究を続け発表するにあたり、学校の先生をはじめ、井川地域の多くの人々にアドバイスを貰ってきたという。海野さんの発表の中以外に、他の学生からも地域の人々への感謝の言葉があった。

井川地域の学習発表会

 発表会が開催された井川生涯学習交流館には、生徒の親族やPTAの方や研究をサポートしてくれた地域の人々から駐在さんまで、30人以上が集まって熱心に学生の発表を聞いていた。それぞれの学生が発表を終えると、多くの方から学生の研究に対する温かい労いの言葉がかけられていた。温かい言葉だけではなく、より良くするための改善ポイントやアドバイス、研究に関連する地域の昔話などの話も聞けた。今回の発表は、まだ3月の卒業までの途中報告。発表会でアドバイスをもらった学生達は、この後、より研究の精度を上げていきそうであった。地域の財産である子どもたちを、地域全体で育てていこうという意識、都市では失われつつある地域の結びつきが井川地域では現在でも残されていた。

子どもの発表から
井川地域の気づきも

井川地域の学習発表会
櫻井校長先生

 発表会の最後には櫻井校長先生から、こども園の3年間、小中学校合わせて9年間の計12年間を、地域が一丸になって子ども達を育てていくという話があった。都市部の環境とは異なるが、地域が一丸となって子ども達を育てて行こうとする気概を感じ取れた。

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井川自治会連合会長の栗下さん

 井川で暮らし井川が好きな子ども達が、自分たちの目線で井川を研究し発表をした結果、地域の方々にも色々な気付きがあったという感想もあった。井川自治会連合会長の栗下さんからは、9年生は、来年井川を去り高校に行くが、井川に戻ってきてもらえるような魅力づくりをしていこうという話があった。今回の発表会に参加した人々全員が井川を愛していることが、子ども達への感想の言葉を通じてひしひしと感じられた。

 井川地域は、海野さんをはじめ、井川を巣立つ子どもたちにも誇れる故郷である。何年後かに戻ってきて井川地域の活性化を牽引する人材になってくれることを願うばかりだ。井川地域の活性化という観点では、海野さんのWEBサイトや松下さんのグルメマップが、地域や観光客達への井川の魅力発信の一助になりそうだ。

※この情報は、2022年12月のものです。

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