南アルプスの魅力発見!
HOME > イベント情報 > 自然体験活動指導者育成講座1

イベント情報Event information

自然体験活動
指導者育成講座1

『「知る」ことは
「感じる」ことの
半分も重要ではない』

自然体験活動指導者育成講座1

梅雨の6月上旬、南アルプスユネスコエコパーク井川自然の家(以下「井川自然の家」)では、自然体験活動指導者としての基礎を身につける『自然体験活動指導者育成講座1』が開かれた。今回の講座と秋にある講座、井川自然の家で開催されるイベント1回の3回の参加で、静岡県の公的な資格である『静岡県初級青少年指導者』などが取得できる。『静岡県初級青少年指導者』を得ると静岡県内で実施される自然体験活動の指導者として活躍できる。その他に『静岡市環境学習指導員』や『普通救命講習1』の資格も取得できるという。

自然体験活動指導者育成講座1

 いままで取材してきた井川自然の家のイベントは、家族や子供の参加が中心だったが、今回は、静岡県内から自然活動に関心のある大人9名が参加した。

 講座は実習を行ったり、専門講師による講義を受けたりしながら、自然と触れ合うための専門の知識を習得できるプログラムとなっている。講座の内容を時系列で紹介する。

朝9時に集合!

 1泊2日で開催される本講座。1日目の朝9時に井川自然の家に集合。

 集会広場での開講式の後、スタッフによるガイドハイクを体験。グループに分かれて、スタッフから井川地域の自然や植生などの説明を受けながら、井川自然の家の広い施設内を1時間あまり散策した。参加者は、樹齢50年程の木の幹や施設内にある植物の説明を熱心に聞いていた。

南アルプスユネスコ
エコパークについて学ぶ
(1日目:10:45〜12:00)

自然体験活動指導者育成講座1

 ガイドハイクで井川の自然を少し体験した後は、南アルプスユネスコエコパークについて学ぶ。

北は3,000m級の南アルプスの山々、南は駿河湾と自然に恵まれている静岡市。市域の70%以上が山林地。山々に吸収された雨が安倍川、藁科川、大井川などを経由して駿河湾に流れ込む。駿河湾の水蒸気が雨になり、南アルプスの山々に降るという自然のサイクルができているという。この結果として、静岡市は、冬は温暖で夏は多雨な環境が作られている。

平成26年6月に、山梨、長野、静岡にまたがる南アルプスとその麓の地域がユネスコエコパークに登録された。「高い山、深い谷が育む生物と文化の多様性」という言葉が、南アルプスユネスコエコパークの特徴を表現している。南アルプスユネスコエコパークは、核心地域、緩衝地域、移行地域の3つのエリアに分かれており、エリアごと役割も異なっている。核心地域、緩衝地域は人間が居住できないが、「移行」地域は、人々が居住し、生活を営んでいる。また、人間が居住して来たエリアは、その土地の歴史や伝統、文化などが存在し、人と自然が共生しているエリアである。自然ばかりに目が行きがちだが、ユネスコエコパークは、そんな歴史や伝統も重視しているという。静岡市の井川地域は、南アルプスユネスコエコパークの移行地域にあたり、在来作物や神楽など昔から脈々と受け継がれている歴史や伝統が今でも継承されている。参加者達は、グループミーティングをしながら、自然と人間の共生について討議した。自然や伝統が息づく井川の過疎化問題や、移行地域の魅力発信の必要性を提言していた。

自然体験活動指導者育成講座1

指導者としての
リスク管理について学ぶ
(1日目:13:00~14:00)

 昼食をとった後は、この後、実習するテント設営・撤収、野外炊飯に関するリスクについて、具体的な事象を元に説明があった。指導者になる中で、リスクマネジメントが非常に重要である。リスクを0にすることはできないが、可能な限りリスクを0に近付けるためには、指導者として「経験」が大事である。指導力・コミュニケーションなどの「ソフトスキル」と自然や活動等に関する知識の「ハードスキル」を状況に応じて適切に判断する重要性を学んだ。焚火用の木材やまきの割り方一つでもリスクがある事を参加者達は真剣に聞いていた。

テントの設営と
夕食のカレー作り
(1日目:14:00~19:00)

自然体験活動指導者育成講座1

 14時頃からテントの設営とカレー作りの実体験をする。9人の参加者それぞれが、今晩寝るためのテントを設営する。テントの設営の仕方や、指導者としての観点や注意事項などをスタッフから丁寧に指導を受ける。その後、参加者同士協力しながら、それぞれのテントを設営していく。

 テントの設営が終わると、夕食のカレー作り。カレー作りについても、素材の切り方や煮込むタイミング、炊飯時の注意事項、火の起こし方や木組みなど、詳細について説明があった。

自然体験活動指導者育成講座1

 スタッフの丁寧な説明もあって、参加者達は、手際よく食材の準備や火起こしを行い、カレーの良いかおりが周辺に立ち込んでいた。火起こしから1時間もかからずに完成したカレーを満足げに食べていた。

 テントの設営、カレー作りとも、先ほど受けた講義に基づき、周囲にあるリスクを確認したり、時には講義時に書いたメモを見たりしながら指導者の心得を実践していた。

一日の疲れを癒す
(1日目:19:00~22:00)

自然体験活動指導者育成講座1

 夕食後の講義や一日の振り返りを行った後、施設にある風呂に入浴して疲れを癒した。施設内の案内もあり、昨年新設された新館の魅力をスタッフが伝えていた。朝9時から始まったイベントが終わり、就寝したのは22時頃であった。今晩は、井川の自然の中で、自分が設営したテントに、一人眠りについていく。

朝食のカートンドッグ作りと
テントの撤収
(2日目:6:00〜9:00)

自然体験活動指導者育成講座1

 朝6時に起床。井川自然の家では恒例のカートンドックを各人で作り朝食を済ませた。その後、テントを自分たちで撤収。設営したときよりも慣れた手つきでテントを撤収していく。

ネイチャーゲームの体験
(2日目:9:30〜11:00)

自然体験活動指導者育成講座1

 テント撤収の後は、ネイチャーゲームの体験。2日目は、1日目の夜から降り始めた小雨の中での体験となった。急遽、降雨になってしまい、活動場所や活動内容を一部変更して実施した。草木の中から人工物を探したり、松ぼっくりを使ってリレーなどをしたり、参加者たちは童心に戻りながら、自然の中でゲームを楽しんでいた。ネイチャーゲームを運営していた岩崎夫妻が、この後の講義で、体験したネイチャーゲームの立案について、丁寧に説明をしてくれた。

岩崎夫妻によるガイドハイクを
事例にしたイベント立案の手法
(2日目:11:00〜)

自然体験活動指導者育成講座1

 ネイチャーゲームを運営していた【ヤスさん&けいこママ】こと岩崎夫妻から「ガイドハイクを事例に実施計画の立案を学ぶ。講師の【ヤスさん&けいこママ】は、井川が大好きで、20年近く井川地域の様々なイベントに携わっているという。今回も講義用に40ページ近くのスライド資料を用意し、参加者にイベント立案の手法を細かく説明してくれた。ヤスさんからは、イベント立案にあたり、伝えたいことや対象者を明確にすること、自分を知ることなど、10のポイントについて実体験を踏まえて講義があった。今朝のネイチャーゲームも降雨となってしまったため、急遽内容を変更したとのこと。どんな企画も、まずは、真似から入りそこから自分流の企画を組み立てて行くことなど、スライドを用いて説明があった。

自然体験活動指導者育成講座1

 けいこママからは、『「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない』というレイチェル・カーソン著の『センスオブワンダー』の言葉の説明を受けた。植物の名前を知るのではなく、その色や匂いなどを個人個人が感じることが大事。指導者が語るのではなく「自然に語らせる」といった指導者の心得を学んだ。「学んだ知識は忘れてしまうけど、感じた事は忘れない」という言葉が印象的であった。

 実際に井川地域で指導者として多くのイベントを企画・運営している岩崎夫妻の講義は、指導者になるにあたり参考になる事が多く、参加者は、熱心にメモをとっていた。

普通救命講習1の受講
(2日目:13:00~16:00)

自然体験活動指導者育成講座1

 静岡市消防団から従来の方法に新型コロナウイルス感染症対策を加えた方法での普通救命講習を受講した。参加者達が指導者の立場でイベント運営している時の突発的な事故に対する応急手当を学んだ。心肺蘇生法やAEDの使用方法など実演を交えた講義を受け、正しい知識や技術を習得した。

指導者としての心得

自然体験活動指導者育成講座1

 今回の講座では、南アルプスユネスコエコパークの魅力と指導者としての「リスクマネジメント」についての知見が中心の内容であった。便利な市街地に住んでいると、四季の移り変わりが、気温でしか感じられないことが多くなっている。改めて、四季折々の南アルプスの自然、井川のまちの色・音・味を感じる重要性が再確認できた。井川で、花や植物を知る。しかし、暫く経つとその花や植物の名前を忘れてしまっている事が多い。一方、強烈な色や匂いを持つ花や植物は、なかなか忘れる事は無い。これが、『「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない』。この言葉は、自然を体験する上で非常に重要なキーワードであることを学んだ。

自然体験活動指導者育成講座1

 今回の参加者達は、必ずしも指導者になる事が目的では無いようだ。ある参加者は、家族でアウトドアをする機会が多く、多い時は20名ほどでキャンプをするが、その場合のリスク管理をするために今回の講義を受けたとのこと。他のグループは、静岡市の梅ヶ島で自然体験的なイベントを開催するにあたり、そのノウハウ取得のために参加したとのこと。個人で参加していた女性は、井川が大好きでこのような企画で、資格まで取れるのであればという事で参加。また違う女性は、アウトドアの指導者をめざして今回参加した。参加目的は各人それぞれだが、参加者の井川の自然を愛する気持ちは並々ならぬものであった。

自然体験活動指導者育成講座1

 このような講座を通じて、将来の子供達の指導者となる人々を静岡市や井川自然の家ではバックアップしてくれている。

 今回のタイトルは、本講座の講師である、岩崎さんが教えてくれた言葉。知識だけが先行しがちな現代で、「感じる」体験の重要性を学んだ。今回の参加者達は、この言葉を指導者として子供達に伝えていってくれるであろう。

イベント名 自然体験活動指導者育成講座1
開催日・開催期間 毎年6月上旬
会場 静岡市南アルプスユネスコ
エコパーク井川自然の家
(静岡市葵区井川3055-1)
駐車場 井川自然の家駐車場をご利用ください
主催 静岡市南アルプスユネスコ
エコパーク井川自然の家
お問い合わせ TEL:054-260-2761

※この情報は、2021年6月のものです。
 開催時間など掲載内容は変更されている場合があります。おでかけ前に主催者・施設にご確認ください。

    南アルプスを知る
  • 歴史文化を知る
  • 自然を体験する
  • 心と体を癒やす
  • 地元の味、旬な食材を味わう
  • 在来作物
  • 動画一覧